
アトピーの症状は汗をかくと悪化すると皮膚科では言われます。その反面、体質改善には汗をかいたほうが良いという話も聞きます。実際は汗をかくと皮膚がかゆくなる場合が多く、運動もお風呂も避けたくなることが多いですね。結局どうしたらいいのか・・・という話です。
もくじ
アトピーは汗で悪化すると言われるのはなぜか?
皮膚科ではよく、アトピー肌には汗はかぶれの原因になるので、スキンケアとして汗の処理はちゃんとしてくださいと言われます。(私はずっと言われていました。)実際問題、汗を放置すると肌がかゆくなってしまいます。
アトピー体質の人だと、汗をかくと、肌が痒くなることが多いはずです。
炎症がつよくて肌が赤くなるとか、
汗のかきはじめに猛烈にかゆくなって皮膚を掻き壊してしまうとか、
汗が乾いてからかゆみがひどくなるとか、
パターンもいろいろ経験があると思います。
汗をかいても大して辛くない人は、乾燥性のアトピーさんかもしれません。
また、汗のかゆみが嫌なので、汗をかくシチュエーションを出来るだけ避けて生活している人は、あまり自覚がなかったりもします。
汗をかかない生活を続けていく中で、あまり汗をかかない体質になってしまった人もいることでしょう。
アトピーが汗でかゆみを引き起こす原因
汗によってアトピーが悪化する原因は
・汗の老廃物により炎症がひどくなる。
・汗により皮膚の常在菌のバランスがくずれ、ブドウ球菌が増殖する
・汗で繁殖するカビ・真菌によるアレルギー反応
等が挙げられます。
あと、汗をかく直前というのは、体が熱を帯びている状況ですので、単純に体温があがって末梢の血流が良くなり、かゆみも同時に引き起こされている点も同時に覚えておくとよいと思います。
アトピーは汗をかくと炎症が強くなる
汗をかくと、どうしても炎症がひどくなります。
汗でアトピーがひどくなる部位と言うのは、汗が溜まりやすい箇所のことが多いです。腕の関節の内側とか、脇とか。首もそうですね。
汗は体温調節の役割を果たしています。
汗にも種類があって、
・エクリン腺から出る汗と
・アポクリン腺から出る汗
で役割が違います。
体温調節で出てくる汗は、エクリン線の汗です。そしてこちらが圧倒的に日常生活に関係しているので、ここでお話するのはエクリン線から出る汗です。
体温が上昇すると、血液からミネラルと水分が汗腺(汗をつくりだす器官)にとりこまれます。
このときに、正常な場合は、ミネラル分は血液に再吸収され、少量の塩分と水分だけが汗として体から出ていきます。汗の質はさらっとして蒸発しやすく、肌にもあまり残りません。
しかし、汗腺の機能が衰えていると、ミネラル分の再吸収ができません。
必要なミネラルも一緒に体外に排出されてしまいます。
ミネラル成分を含んだ汗はベタベタとして、蒸発しにくく、肌に残りやすい汗です。
汗の成分は、塩分とミネラル分です。そもそも汗自体が刺激になりやすいです。
加えて、アトピーの患部は、汗腺がうまく機能していないことが多く、ミネラル成分を含んだベタベタの汗であることが多いです。
ちょっと出た汗の塩分やミネラル分が、患部の傷や炎症にとって物理的な刺激となり、アトピーのかゆみを誘発してしまいます。
汗のかきはじめですぐかゆくなる場合ですね。
アトピーとブドウ球菌の異常繁殖
良い汗、サラサラの汗は、蒸発しやすいです。成分は99%が水分で、残り1%に塩化ナトリウム・尿素・アンモニア・ミネラルが含まれています。少量の塩分が含まれているため、皮膚表面のph(ペーハー)つまり酸性度を保つことができます。健康な肌の皮膚表面のphは弱酸性です。
体温調整しながら、肌の表面の常在菌のバランスもとっているのが良い汗の効能でもあります。自然に肌のphがコントロールされているんですね。
ところが、悪いベタベタした汗をかくと、蒸発しにくい上にミネラル成分(カルシウムや亜鉛、特に重炭酸イオンなどが増える)により、肌表面をアルカリ性にしてしまいます。
アルカリ性の状態では、皮膚の常在菌の中でも、黄色ブドウ球菌が繁殖しやすくなります。
黄色ブドウ球菌は、普通、どの人の肌にもいる菌です。
食べ物に着いて繁殖すると、食中毒を起こす菌としても有名ですね。
一定量いること自体には問題ないのですが、大量繁殖すると、皮膚に刺激を与え、かゆみを誘発します。
アトピー性皮膚炎の人の肌は、もともと皮膚表面が荒れており、phがアルカリ性に傾いており、黄色ブドウ球菌が多い傾向にあります。
そこへ、ベタベタの汗をかくと、さらにphはアルカリに傾き、黄色ブドウ球菌がいっそう繁殖します。
汗をかいた後に放置していて、しばらくして猛烈なかゆみを感じる場合は、ブドウ球菌の仕業と考えられます。
この場合、何らかの方法で、皮膚表面のアルカリ性を中和し、ブドウ球菌の繁殖を抑え、かゆみを和らげることができる場合があります。
アトピーの汗のかゆみはカビが原因?広島大学が研究
平成25年6月に、広島大学の研究で、カビが出すたんぱく質が汗のかゆみの原因だと特定されたニュースが発表されました。
人の皮膚に広く付着している「マラセチアグロボーザ」と呼ばれるカビの一種によって作り出されたたんぱく質が汗に溶け込んで体内に入ることでアレルギー反応を起こすそうで、体内に侵入した異物に反応するタンパク質「IgE」と結合した肥満細胞が、カビのタンパク質と結びつくと、ヒスタミンを放出し、はれやかゆみなどが起こっているのだと。
http://www.hiroshima-u.ac.jp/top/koho_press/press/h2501-12/p_etx2mm.html
私は日経新聞で知りましたが、今後この研究をもとに、汗アレルギーの診断方法と治療やスキンケアの方法の開発が期待できるそうです。
結構大々的に、テレビでも報道がありました。
アトピーの汗によるかゆみ対策・肌のケア方法
さて、汗で肌がかゆくなる主な原因を挙げてみました。
そこから考えられる一番手っ取り早いかゆみ対策は、
・汗をかいたらすぐに拭く
まずはこれに尽きます。
黄色ブドウ球菌やカビや真菌が繁殖する前に、汗を拭き取ってしまうこと。
こまめに濡れたおしぼりなどで、押さえるようにして汗を拭くのが効果的です。
本当は汗をかくごとにシャワーで洗い流すのが良いです。
このシャワーは「水」がいいです。お湯だと、一日に何回もシャワーすれば、アトピー肌の貴重な皮脂が流されすぎて、乾燥が進みます。
現実問題、働いていたら、朝に通勤して会社についてシャワーをするのは不可能に近いので、まずは濡れタオルで拭くことを徹底する。
そして、
・汗のついた服は早く着替える
夏は汗を良くかくので、汗で服が湿ったら、着替えるのが一番です。
面倒ではありますが・・・。
速乾性の下着などが売られていて、汗の自然乾燥を促す素材で作られています。お医者さんの中には、衣類もできるだけ汗の吸収の良いものをと勧められる場合が多いです。
もちろん汗の吸収が悪いと、皮膚に汗がたまったままになりますから、間違いなくかゆくなります。
ですが、私の経験上、速乾性の下着はさらっとしていても、かゆくなることがあります。
汗の水分がなくなっただけではだめなんです。
きっと汗の成分自体(ベタベタ汗のミネラルなど)は下着に付着したままなのです。これがアトピー肌のかぶれを起こしている実感があります。
そこへゴムの締め付けがあったら、余計にひどくなります。皮膚とゴム部分の密着した接点でかぶれや菌やカビの悪さが進行しているのでしょう。
夏は風通しのよさそうなシャツを着て、下着は着替えを持っていき、通勤後はトイレで着替えてからオフィスワークに取り組むようにしたら、かなりかゆみが軽減されました。
めんどくさいけど・・・。脇や関節を服の上から掻きむしり、血が付いていないか気にしながら仕事するよりはマシです。
アトピーの汗はエアコンで乾かさない!間違っても!
汗は必ず拭き取ること。
扇風機やエアコンの風で乾かすのはNGです。かゆみが出てしまいます。
これも、汗の成分が肌に残るので、かぶれの原因になったり、ミネラル成分でphがアルカリ性に傾きやすくなってしまうから。
ついでに、エアコンの空気で肌の乾燥がすすんで、皮膚の落屑がひどくなります。
湿り気を帯びた皮膚を乾燥させると、皮膚が突っ張りますので、傷が開きやすくもなります。
夏場に外出から帰ってきて、すぐエアコンの前へ・・・、は止めましょう。一瞬気持ちいいのですが、かゆみ対策・肌対策としてはNGです。
まとめ
汗で悪化するアトピーのタイプの方は、本当に夏は憂鬱ですよね。
とにかくこまめに汗を拭くことで、悪化を防ぐのは大切です。
それと同時に、体内から皮膚を正常化する努力を続けていきましょう。