
アトピーの治療を保湿なしで行う、いわゆる「脱保湿」。肌の本来の回復力と皮脂分泌を促進する目的で行われるようですが、効果はどうなのでしょうか。カサカサの肌が続いても、続けるかどうか迷う人も多いようです。私の経験を交えてお話できればと。
もくじ
アトピーが脱保湿で悪化する?
脱保湿をして、経過が良好な方と、そうでない方がいます。
そもそも、医師指導のもとの標準治療では、アトピー性皮膚炎は皮膚のバリア機能の低下がひどいため、保湿することが大切と考えられています。
脱保湿は、逆の考え方をしており、肌に外部から保湿剤を塗り続けることで、保湿依存状態になり、自ら皮脂を分泌することができなくなると考えます。結果、肌の回復力が落ちると考えるのです。
脱保湿では、脱保湿を推薦している、阪南大学の佐藤先生が有名ですね。書籍も出してらっしゃいます。
「患者に学んだ成人型アトピー治療 脱ステロイド・脱保湿療法/佐藤健二」
脱保湿をするかしないかは、お医者さんの治療方針によります。
以下は一般論。
一般的に、脱ステロイドをしていて、ステロイドリバウンドで浸出液が多い時期は、保湿剤を塗っても体液で流れてしまうので、保湿自体が難しいことが多いです。
また、皮膚表面の角質がほとんどないほど赤剥け状態になっていた場合も、保湿剤を塗ると逆に刺激になります。赤みや炎症が強い時も、保湿剤を塗るとかえってかゆくなる場合があります。
また、保湿剤が合わず、接触性皮膚炎を起こしてしまう場合も、保湿しないほうが経過が良いことがあります。
こういう場合は、積極的に保湿剤を使わないほうがいい。
私も、炎症がひどくて、ワセリンを塗ると逆にかゆくてたまらない時期がありました。
ワセリンを塗ることにより、表皮にフタをするので熱がこもり、体温が上昇し、かゆみが起こりやすくなる感じがしました。もしかしたらワセリン自体が合っていな買ったのかもしれません。
思いきってワセリンを止めたら、かゆみが楽になった経験があります。
逆に、乾燥がひどい場合、深い引っかき傷やひび割れ、かさぶたが多い場合は、脱保湿をすることで悪化する場合もありますし、脱保湿が有効な場合もあります。
私は、落屑が激しく、皮膚がえぐれて傷が深い時期も経験しており、保湿しないで放置した結果、長い間治りが悪かったことも経験しています。
結局、同じ人間でも、皮膚の状態と時期によって、ケースバイケースであると言えます。
一番参考になるのは、前国立名古屋病院皮膚科医師の深谷元継先生のHPです。脱ステロイド治療に尽力されていた先生です。
http://www.tclinic.jp/atopy/06.htm
脱ステロイド治療の、一般的な経過と外用剤の使用について書かれています。脱ステロイド治療をされているお医者さんの中でも意見が分かれるようであり、「患者によっても、病期によっても、適不適はさまざま」とされています。すごく参考になりますので目を通されることをおすすめします。
アトピー脱保湿療法で皮膚がイタイ
私が脱保湿で失敗した経験を少々。
脱ステロイドをして、漢方治療をし、ステロイドを段階的に止めて、最後にはワセリンだけで過ごせるようになった時期がありました。
皮膚はがっさがさで、地割れのように肌の表皮が固く、大きなかさぶたのような落屑がボロボロ出る状態。
かゆくて引っ掻くと、角質が皮膚に引っかかって、ボロっと大きな皮膚片が取れるのですが、その時に血が出てしまうので、いつもあちこち傷だらけの状態でした。
保湿したほうが圧倒的に楽だったのですが、本やネットで、脱ステロイドの際には肌の力を取り戻すために保湿も止めたほうがいいという話を聞き、そのまま、ワセリンも徐徐に止めていったのです。
ワセリンも、化粧水やローションの類もなし。本当になんにもつけない。風呂上がりも何もつけない状態にもっていきました。
結果、どうなったか。
それはもう、ガッサガサのガビガビ、全身ひび割れだらけになりました。
写真なんて撮るって発想が当時なかったので、何も見せられないのですが、よくテレビで脚のかかとのひび割れの薬のDMやってますよね。あのかかとの状態が全身て感じ。
保湿しないと、動くだけで、肌がひび割れて血が出るようになるんです。
もう、皮膚が痛くてたまらなくって、動きがぎこちなくなります。痛いから動きたくない!!
関節は伸ばすと、皮膚がひきつれてひび割れ、血が出ます。ピキって。
最初保湿剤を止めた直後はどうしても一時的にひどくなります。そのことも知っていたので、我慢していました。
かゆみはずっとあるので、どうしても引っ掻き、動かすと血が出るので、体中がイタイ。
イタイので動きたくない・・・。動きたくないんです・・・。
シャレにならないくらい落屑があって、私が歩いたあとはいつも粉だらけでした。
そこから、1か月経過しましたが、症状は変わらず。
2か月経過しても変わらず。
3か月経過しても変わらず。
あれ?アトピー書籍によれば、3か月ぐらいで経過が良くなるのでは?
でも、全く良くなりませんでした。
実践したのが冬だったので、余計に乾燥したのかもしれません・・・。
これはちょっと、続けるの無理かも・・・と思い始めまして、また保湿をするようになりました。
ただ、ワセリンべったりではなく、水分での保湿と、オイルによる保湿に替えました。
そうすると、ガビガビひび割れ状態の肌が、柔らかくなり、体を動かす苦痛が和らぎました。
ストレッチしたり、歩くのも楽になったので、より動くようになりました。
そうしたら、乾燥と落屑がだんだんマシになってきました。はがれおちる皮膚も大きさが小さくなってきて、分厚い角質も柔らかくなっていきました。
会社いくのだけでも痛い状態でしたから、保湿したほうがずっとストレスが少なく、治りも良かったんです。
アトピー脱保湿の正しい方法は?
脱保湿をするかしないかを決めるにあたっては、肌や体の状態と、しっかり相談が必要だと思います。
私の失敗の原因は、脱保湿をした時期が悪かった
この一言に尽きます。
その結果、全身痛くて、動くことが少なくなってしまった。
動かないと血流も悪くなりますし、そうすると回復も遅くなります。
汗をかくこともしないので、もちろん、自分で皮脂を出す力もショボかったと思います。
そんな状況で保湿をしなくなったので、肌の根本的な皮脂分泌力・回復力が追いつかなかったんだと思います。
きちんとした脱保湿については、お医者さんと相談しながら行うのが基本です。
脱保湿を謳う書籍を見てみると、たいていは脱ステロイドと一緒に語られていて、肌が浸出液でジュクジュクになっているケースが多いです。というより、浸出液が多いと保湿なんて物理的に無理です。
保湿を止めるなら、脱ステロイドと一緒に行い、一気にけりをつける方法が良く書籍で紹介されていますが、無理な場合もありますし、人それぞれです。
アトピー脱保湿療法はいつまですればいい?
脱保湿は、開始してから肌が元の状態になるまで続けます。
というと、女性の場合は、美容目的の化粧水とか美容液の保湿はどうするのかという問題があります。
これは、アトピー治療と美容目的は全く別で考えたほうがいいですよね。
保湿しないと肌のシワとかシミとか色素沈着とか気になりますが、一旦アトピーがきちんとおさまって、肌が正常になってから再開するようにしたらいいと思います。
アトピーの肌はそもそも角質が壊れて傷だらけなので、美容成分は刺激にしかなりません。
焦って肌に刺激になるものをつけても、炎症が起きてかえって回復が遅くなることもあります。
脱保湿は、成功すると肌が何もしなくてもしっとりするので、それまで続ければいいでしょう。
でも、脱保湿しても改善が見られないなら一旦止めてみてもいいです。保湿しながらアトピーを治している人もたくさんいます。
脱保湿でカサカサ・キズがひどいなら・・・
カサカサしている軽い程度のアトピーなら、脱保湿で、汗を積極的に出すようにすると、うまく回復できると思います。
加えて、体内の皮膚をつくる力もきちんと養っておくことが併せて大切だと思います。
食事制限をし過ぎていると、肌をつくるのに欠かせないたんぱく質や、皮脂やホルモンの減量になる脂質が足りていないケースもあります。皮膚のターンオーバーを促進する亜鉛の不足があると改善も遅くなりますので注意が必要です。
大きな傷がたくさんある場合は、傷だけ先に保湿で治してしまう方法もあります。
傷だらけだと、体が痛くて、動くのが大変です。
一般的に、傷は、ワセリンを塗った上からサランラップを巻いてあげると、ふさがりやすくなります。
ただし、脱ステロイド治療の最中で、浸出液が止まって乾燥期にさしかかっている場合、皮膚が過敏になる時期でもあります。肌に合う保湿剤を選ぶのに苦労するかもしれませんが、根気よくいろいろ試してみるといいです。
おわりに・まとめ
脱保湿で悪化するか、順調に治るのかは、結局ケースバイケースです。
私は、時期によって肌の状態はコロコロ変わってましたので、脱保湿で改善した時期もあれば、悪化した時期もありました。
まずは、アトピー性皮膚炎だから保湿!とか、保湿は何が何でもNG!という考え一辺倒ではなく、肌の状態を観察しながら、必要な時には保湿剤を使い、正常な状態に導いていけばよいと思います。