
アトピーのプロアクティブ療法がイマイチわからない人向け。内容や方法、いつまでやったらいいのかといった点をわかりやすく中立的立場でまとめました。私はやったことがないですので調べた範囲になりますがご参考ください。
もくじ
アトピーのプロアクティブ治療とは?
プロアクティブとは,「先を見越した」「予防的な」という意味で使われています。
簡単に言うと、先々のアトピーの再燃を見越して、症状がないときにもステロイドやプロトピックを塗ることで、肌の良好な状態を維持する方法です。
これに対する言葉がリアクティブ療法です。
アトピーが出たらステロイドをしっかり塗り、良くなったら塗らない、という方法です。
プロアクティブ療法が提唱される前の方法がそうです。
皮膚科的には、リアクティブ療法が悪いわけではないく、軽症のアトピーであれば症状が出たらステロイドを塗る方法で十分なのだけれども、何度も繰り返し症状がぶり返す患者さんがいる。そういう人は症状が出るたびにステロイドを塗ることを繰り返し、連用状態に陥ってしまいます。そのため、長期的に炎症を予防し肌を安定させるための治療がプロアクティブ療法になるわけです。
アトピーのプロアクティブ治療の手順
1.寛解導入
アトピーがガンガンに悪いときは十分な量のステロイド軟膏をつかって治療します。
かゆみが無くなり皮膚がつるつるになるまで大量にステロイドを塗ります。
これ、どのくらいかと言えば、症状の強さにもよりますが、4週間から8週間が必要と言われています。個人差があるので一概には言えません。とにかく一旦ガツンとステロイドで炎症を抑えきってしまいます。内服ステロイドを使用する医師もいます。
2.予防療法(プロアクティブ)
アトピー肌がたっぷりのステロイド軟膏で皮膚の症状がおさまったら、減量の時期に入ります。
1日1回、1日おきに1回、週2回など、症状に合わせて頻度は調整されます。症状が軽い人は一気に週2回にするなどもあるようです。十分な期間を使って減量していきます。
症状がない場合でも、週に2回、ステロイドやプロトピックを肌に塗ります。
塗るときは、指定された量のステロイドを塗ります。もしくはプロトピックという免疫抑制剤の軟膏に切り替えて外用を続けます。
症状がない場合でも予防的に塗るのです。
ステロイドを使用する皮膚の範囲は変わりません。以前炎症があった場所、かゆみがあった場所には目に見えない内部で炎症が起こっていることも多く、見た目がきれいになっても、かゆみがなくなったように思っても、実はおさまりきっていない炎症がくすぶっていることがあります。そうした炎症がまたアトピーの再燃として皮膚に出てくる可能性があります。
ですので、以前症状があった部位が症状を予防(プロアクティブ)すべき範囲となります。
ポイントは、週に2回と明確に決めた頻度で塗ることを続ける点。
毎日塗る必要はありません。
3.並行してスキンケアを行う
ステロイドやプロトピックを塗らない時も、スキンケア(入浴と保湿)を継続して行います。
4.再発対策
そうはいっても、肌の調子が良いとき悪いときの波があります。
いったん寛解していても、同じように予防していても調子が悪くなるときが必ずあります。とはいっても、調子が悪くなるまでの間隔はリアクティブ治療よりも長いのです。
この場合は一時的にステロイドの使用回数を増やして対応します。軽い症状であれば楽に短期間で寛解状態に戻ることができるとされています。
再発はすぐにコントロールできるので、1日おきや週2回の外用にすぐに戻すことが可能です。
プロアクティブ治療はいつまで続ければいい?
ここまでプロアクティブ治療の内容を見てきたら、いったいいつまで予防的にステロイドやプロトピックを塗り続ける必要があるんだろう?と考えてしまいます。
それに対して、2016年改訂の皮膚科アトピー治療ガイドラインでは、プロアクティブ治療の終了時期については、
プロアクティブ療法は,ステロイド外用薬,タクロリムス外用薬を問わず,皮疹の再燃予防には有用であり,安全性に関しても,ステロイド外用薬で16 週間,タクロリムス外用薬で1 年間までの観察期間においては,多くの報告が基剤の外用と有害事象の差は無いとしており,比較的安全性の高い治療法であると考えられる.ただし,プロアクティブ療法の安全性について,それ以上の期間での検討がなされておらず,副作用の発現については注意深い観察が必要である.
と記されています。
対して、プロアクティブ療法の論文著者のWollenberg 氏は、プロアクティブ療法の期間について、
・中等症患者であれば半年
・重症患者であれば2年間
という目安を提示されているそうです。
正直、プロアクティブ療法を長期にわたって行った研究や追跡調査がまだないんでしょうね。
完全な終点は明示されてはいないようです。
プロアクティブ療法ができる人・できない人
プロアクティブ療法ができる人は、実は限られています。
超重症の人や、最初のステロイド大量塗りで肌がきれいになるレベルまで持っていくことができない方などはプロアクティブ療法ができないケースもありえます。
上記のように、最初に強いステロイドを塗って、肌がきれいになることが前提になっているので、初期治療でシャープにステロイドが効いて治ってくれる人でないと、予防も何もできないわけです。
プロアクティブ治療に入る前にドロップアウトする人は一定数います。
ステロイド剤を外用するとよくなるのだけれど、外用をやめると症状がすぐに再燃してしまうという軽症~中等症の患者さんが対象と考えられているようです。こういう方には有効であることが研究で分かっています。
本当に軽症であれば、症状が出ているところにステロイドを塗って、そのまま改善するでしょうから、リアクティブ治療で良いでしょうしね。
ちなみに、一旦脱ステロイドをして、やぱり止めてステロイド治療に戻りたいと言う人でも、ステロイドがちゃんと効いてくれる状態ならプロアクティブ療法ができるはずです。
ときどきそういうアトピー治療ブログも見かけます。
ステロイド依存でステロイドが効かなくなって、どうしようもなくなって止めた人でも、一旦ステロイドを断つことで依存状態が改善し、ステロイドが効く体に戻っていたらいいわけで。
そこでしっかりステロイドが効いて、寛解まで行けたら、プロアクティブ治療に持ち込めるわけですね。
(心理的に抵抗あるのでやりたくないって人も多いと思うけど)
プロアクティブ療法の注意点
プロアクティブ療法で大切なのは、週2回と決めたら、ペースと薬の量を守って外用を続けることです。
週2回ステロイドやプロトピックを塗ることで、炎症をしっかり押さえこむので、再燃が防げるのです。
週2回の外用を守ることで、ダラダラとステロイドを塗り続けることを防げます。
論文やネット上の解説などいろいろ見ますと、トータルでのステロイドの使用量がプロアクティブのほうが少ないという点をメリットで挙げているのも見受けられますが、正直まだ何とも言えないんじゃないでしょうかね。長期的に、それこそ10~20年スパンで比較しないと、最終的にはわからないと私は思っています。まだ検証できるだけのデータそろってないんでは?
きちんと「管理」すること。
結局ここが大きなポイントなのだと私は考えています。
薬の使用ペースを守らなければ、ステロイドの連用、依存に繋がるリスクや、炎症のコントロール不足に陥るリスクが出てきます。
しっかり医師と相談し、血液検査(TARC)で炎症の状態を見ながら、決めたルールを守って行うことが重要ですね。
見た目はきれいでも薬を塗るのは、心理的に抵抗を覚える人もいるでしょうし、症状が表面的に消えたら薬をさぼってもいいと思ってしまいがちですしね。
塗る量・塗った日を覚えておいたり、記録しておく、忘れない工夫をする、など、患者側にも継続の努力は必要だと思います。
アトピーのプロアクティブ治療はどこで受けられる?
すべての皮膚科で実施されているわけではないようです。
かかりつけ医に相談してみるか、近所の皮膚科に行くなら、事前に電話で問い合わせをしてみると確実です。
ネットで『皮膚科+地名+プロアクティブ治療』で検索してみるのもいいですね。
おわりに
テレビや新聞、ネット上でも、アトピーのプロアクティブ治療を見るようになってきました。
私はもうステロイドを使わなくても平気になってからプロアクティブ治療を知ったので、全く経験はないのですが、悪化してはステロイドを塗り、だんだんステロイドのランクが強くなり、ダラダラ長期連用することを防ぐ方法であってくれるならば、こんなに良いことはないと思います。
ただ、どうなんでしょう。これって、最初に強いステロイドで症状を抑えこめるレベルの人にだけできる方法なんですよね。
結果的に最初の強いステロイドで抑えこめなかった人はどうなるんでしょうか。2か月もランクの強いステロイドを使用してもダメなケースとか、結局長期連用することになるケースもでるのではと心配してしまいます。信頼できるお医者さんと取り組みたいものですね。
すでにステロイド抵抗性(塗っても効かない)になっている人には使えない方法ですし、万能ではないんですね。
治療がいつ終わるのか、予防的に塗るのを止めた後、一切再発しないのかどうかも気になります。
脱ステロイドをした自分としては、プロアクティブ治療と並行して、悪化因子の排除や体内での炎症を減らす根本的なアプローチも同時並行して、最終的には塗らなくて良くなるようにできたら理想だなと感じます。