
アトピーの標準治療はただステロイドやプロトピックを処方するだけかと言えば、そうではないんですよね。標準治療で治すと決めたら、標準治療自体をしっかり理解したいところです。私の感じる注意点とかお話してみます。
もくじ
アトピーの標準治療とは
標準治療とは、日本皮膚科学会が定める「アトピー性皮膚炎治療ガイドライン」 をベースにした治療の事です。
つまり、現段階で皮膚科が行うアトピー性皮膚炎の治療のスタンダードと言えるものです。
詳しいのは、九州以下大学のページ。
http://www.kyudai-derm.org/atopy_care/index.html
「アトピー 標準治療」と検索すれば、一番に出てきます。
アトピー性皮膚炎は、科学的な根拠に基づいて有効性が明らかな標準治療で、症状のない皮膚、快適な生活をめざせます。
アトピー性皮膚炎の標準的な治療では、次の「3本柱」に取り組むことが大切です。
ていねいなスキンケアで清潔な皮膚、肌の潤いを保ちます。
皮膚の炎症を抑えるために外用薬による薬物治療を行います。
症状を悪化させる因子を探し、身の回りからできるだけ除きます。
治療の「3本柱」を継続することで、症状はだんだんと軽くなっていきます。
皮膚科学会の見解としてはこのようになっていますね。
三本柱というのが出てきましたが、これは本当に的を得ている内容だと私は思っています。
三つの面からアトピーにアプローチすることで、病状を軽くすることができるというのは正しいと思います。
・スキンケア
・炎症を抑えるための薬物治療
・症状の悪化因子を取り除く
この三つのどれもが大切だし、逆を言えば、3本柱の何れかの対策が欠けたら、症状の改善が思うようにいかないってことだとも思います。
でもね・・・。
このコンセプト、わかりやすくていいなぁとは思うものの、ぶっちゃけ、これ全部やってくれる医師って少ないですよね。
標準治療の現状
現状、多くの皮膚科では、この3本柱全てについて、深くアドバイスをしてくれる医療機関がまだ限られてます。
1 ワセリンや保湿剤を出すだけ。場合によっては特定の洗浄剤や石鹸を勧める。
2 ステロイド、タクロリムス(プロトピック)を処方する
3 アレルギーの血液検査でIgE抗体が反応するものを特定する
概ねこんなところでしょうか。
これ以上のことをしてくれる先生は本当に丁寧な先生だと思います。
むしろ大半の皮膚科は、2のステロイドやプロトピックの処方だけで終わっているのではないでしょうか。
2008年から保険適用となったTARC検査で炎症反応を見てステロイドの量を判断してくれていますでしょうか。
皮膚の場所によって、薬の強さを加減してくれていますでしょうか。
薬の塗りかた、薬の使用計画についてしっかり納得のいく説明をしてくれますか?すべての皮膚科がしてくれるかといえば、そうではありません。
俗にいう3分診療の皮膚科も多いですね。
過去には、本来は短期間の使用が基本のステロイド外用薬を、長期にわたって使用する人が後をたたず、ステロイド皮膚炎を起こし、勝手に薬をやめることで症状が悪化したという事例が後を絶ちませんでした。
これに対して、お医者さん側は、「きちんと通わない、薬を塗らない患者のせい」と言うし、患者側は「いつまでたっても治らない」と不信感を募らせ、勝手にステロイドを止めて民間療法にすがる・・・・。
これがよくあった構図かな、と思います。
しかし、今はステロイドの処方の仕方にも変化が出ています。
以前は、症状が出たらステロイドを塗って、症状が消えたら止め、再燃したらまた処方される、という方法がメインでした。(私も昔この方法で延々とステロイドを使い続けてきたクチです。)
標準治療で言われているステロイドの処方は、最初に必要な量をたっぷりと使い、ゆっくりと減らしていく方法です。
その後、皮膚表面が割ときれいになっても、検査数値や肌の見た目で、まだ肌の内部で炎症がのこっている間は薬を使い続ける方法をとります。
最初にすごい強度高い薬が処方され、けっこうたっぷり塗るように言われるのでびっくりするのですが、そのほうがダラダラとステロイドを使わずに済むため、以前に起きていた長期使用による副作用も避けることができるという方法です。
ちゃんとそのあたりの説明や、計画について、先生から説明を受けましょう。何も言われなくてもこちらから質問したらいいです。それで答えてくれないような人ならお医者さん変えたらいいでしょう。
ただ、はたしてこの方法を実際に実現出来ている医師がどれくらいいるのか・・・です。
この「最初に必要な量」というのが、どのくらいなのかを見極めるのが医師の腕なんでしょうね。ここで必要十分な量を処方しなければ、炎症を抑えきれないでしょ?そして次の診療では、もっと強いステロイドを・・・。となると、ステロイドを延々と使う羽目になるので。
ステロイドの処方ひとつとっても、皮膚の状態や数値をきちんと見て、判断してくれるお医者さんを選ばないといけないんですね。
(すべての近所の皮膚科の先生がきめ細かく薬の使用について説明してくれる日が来てほしいものです。)
現状では、私たち患者の側から、良いお医者さんを見極めて通うようにしたいところです。良い医師を選んで行くことで自然な競争が生まれて、不勉強なお医者さんが淘汰される効果もあるでしょうし。
3本柱を徹底してみるとアトピー治療にに光が差す
では、3本柱についてもう少し詳しく見てみたいです。
スキンケアについて
現状医師は保湿剤を処方するだけです。ワセリンやヒルドイドなどが主に処方されるものでしょう。
でも、その塗りかたや、使用頻度ぐらいは言うかもしれないけれど、ステロイドと保湿剤はどちらを先に塗るかとかまでは、診察の時に教えてはくれません。
先にあげた九州大学医学部のHPにはきちんと書かれています。
http://www.kyudai-derm.org/atopy_care/improvement_01_3.html
こういう情報ぐらいはすべての皮膚科でフォローしてほしいのですが・・・。
できているところと、そうでないところがあるのも事実ですね。
なので、ネットを使って私たち患者は、自力でこの情報にたどり着くとか努力しないといけないですよね・・・。
実はこれでも足りないぐらいです。
ここからは、各患者さんの肌状態に合わせてのアドバイスがもらえるのかと言えばどうでしょう。そこまでは面倒見てくれないんじゃないかな。保湿剤や石鹸などのスキンケア製品の選び方もそうですよね。
例えば、添加物が入っていない普通の石鹸って、どんなものなのか。見分けがつくでしょうか。
添加物の定義がわからない人は、パッケージの「無添加」を頼りに石鹸を使っているかもしれません。
でも使った石鹸が、逆に悪化因子に化けているかもしれない。
無添加石鹸の中に入っている、金属封鎖剤に肌が接触性皮膚炎(Ⅳ型アレルギー)を起こしているなら、症状はひどくなるばかりです。
そういうことを、診察の時にヒヤリングし、対処法を一緒に考えてくれるかどうか。
市販の無添加石鹸で皮膚が悪化したら、それを取り除けばいいのですが、逆にステロイドの強度をあげて対処するなんてことはよく起きていることです。
そこまで踏み込んでくれる医師はあんまりいないでしょう。
悪化因子の排除について
3の症状の悪化因子の排除についてはどうでしょうか。
実はこれが現状一番お医者さんが深く踏み込めていない項目です。
九州医大のホームページでは、大人のアトピーの悪化因子についても記載があります。
・環境因子(ダニ・ハウスダストなど)
・環境因子(化粧品・装身具・ゴム・布など)
・発汗
・ストレス
・細菌・真菌
・食物
が列挙されています。
環境因子が二つに分かれているのは、きっと一つ目の環境因子はⅠ型アレルギーで、二つ目がⅣ型アレルギーでしょうね。
その下に、小さい字でこう書かれています。
年齢や患者さんの体質によって原因・悪化因子は異なります。医師とよく相談して対策を考えましょう
http://www.kyudai-derm.org/atopy_care/improvement_03.html
では、実際にお医者さんから、詳しく相談や対策をしてもらえた人はどのくらいいるのでしょうか。そもそも詳しいとはどのレベルの話なのでしょうか。
もし、きちんとそこまでしてくれる先生がいたら、本当に良い先生です。
実際には診察時間が限られており、相談に時間を取ることができていないのではないでしょうか。
例えば、環境因子の一つ目のダニやハウスダストなどは、血液検査でIgEの数値で判断ができるため、実施すればある程度目星がつきます。
しかし、ダニが家のどこにいるのか?についてまで、お医者さんと話したことある人は少ないでしょう。
わかっているお医者さんであれば、きっと「布団やカーペットだけではなく、ぬいぐるみやお洋服もダニ退治してね」というアドバイスをされているかも。ダニ退治の方法まで教えてくれてたら最高!だけど、そこまで診察で教えてくれるお医者さんは・・・?
食事についても、ストレスについても、家の中に待っているカビについても、どれだけのお医者さんが一緒に対策してくれるでしょうか・・・。
最近はクリニックのホームページで情報提供してくれる親切なお医者さんも出てきています。そういうのは自分で良く見て実践すること。
そして、仮にそこまで医師が教えてくれたとしても、実際に生活の中でどんなダニ対策をするのか、知識を摘要して解決するのは患者自身がやるしかありません。
寝ている時より起きて着替えた時のほうが痒い気がするなら、クローゼットのダニ対策をするとか、ソファーに寝転がるとかゆい気がするならソファーの掃除機がけを徹底するとか、ダニ対策ひとつとってもいろいろあるのです。
私たちが自ら探し、気づき、対処する姿勢があればこそ、本当の改善につながるんですよね。
標準治療の三本柱はわかりやすい表現でアトピー改善のための王道を示してくれていますが、そのすべてを手取り足取り医師がやってくれるわけではありません。
だからと言って、お医者さんに文句を言っても始まりません。今の医療に批判や愚痴を撒き散らすのではなく、自分で情報収集をして、自分の体に当てはめて、改善していくしかありません。
標準治療でアトピーは治るのか
標準治療で治るのかどうか、は、どれだけこの3本柱の内容を深く理解し、日常生活に落とし込めているかに尽きると私は思います。
お医者さんも患者も勘違いしてはいけない点は、
ステロイド・プロトピック塗ってたら治ったというのが標準治療の成果ではないことです。
スキンケアしながら薬も使いながら、悪化因子を特定して排除・因子に反応しなくなる
この状態に持って行けたらステロイドやプロトピックを使わなくても大丈夫なレベルまで治るということでしょう。少なくとも私はそう捉えます。
例えば、実際に九州医大の標準治療のホームページに記載がある大人のアトピーの症例ですが、
http://www.kyudai-derm.org/atopy_care/effectiveness_03.html
成人発症のアトピー性皮膚炎。ステロイドによる治療がうまくいかず、医療不信、ステロイド不信となり、脱ステロイド療法を行うなかで症状が悪化、重症なヘルペスウイルス感染症であるカポジ水痘様発疹症を併発し緊急入院しました。
と書いてあり、続いて、
3週間入院し、標準的な治療とスキンケアを続け劇的に改善。それ以後、症状のない状態を維持しています。
として、2年後にきれいになった写真を掲載しています。
明確に「ステロイド治療が上手くいかず」とあります。
最初にステロイドを使ったものの、副作用が出たのでしょう。皮膚の菲薄化・毛細血管拡張や感染症に弱くなるのはステロイドの主な副作用です。
標準治療できれいになったことをアピールしている事例ではありますが、薬の使用を誤ったため、逆にステロイドが悪化因子になったという事例でもあります。
ステロイドの使用が悪いため、ウイルス感染という皮膚炎の悪化因子を増やしてしまったんですね。
ステロイドの使い方が悪かった上、医療不信になっているそうですが、最初から標準治療のアプローチができていれば、こじれることがなかったのかもしれませんよね。ここに標準治療においてもステロイド軟膏の使い方や量などがへただったら、逆に悪化するリスクがあることも同時に示しています。(これ以上は言いませんが)
標準治療で速やかにアトピーを治すためには、外用剤で症状を押さえている間に、きちんと悪化因子を特定して排除できるのが理想です。
悪化因子を取り除くことをせず、スキンケアもかえって肌に刺激になるようなことをしていたら、どんなにステロイドを塗ってもアトピーの症状は出ては消えを繰り返す。そこへ漫然とステロイドを塗っていれば、そりゃ治療も長くなってしまうでしょう。副作用の出る確率も高くなるんじゃないでしょうか。
標準治療のホームページから、その点を読み取る必要があると私は思っています。
現状、標準治療でのアトピー治療に挑む時に、肝に銘じるべきは、
・患者自身が標準治療のサイトを読み込んで理解する
・薬の使用方法、計画、血液検査を行い、きちんと説明してくれる医師を探す。
・標準治療で医師が面倒みてくれない点は自力で補う
という姿勢です。
ステロイドやプロトピックは、本当に使い方が大事なので、ちゃんとわかっているお医者さんかどうか、患者側でも見極めて、選んでいかないといけないよね。
最近はお医者さんもホームページなどで治療方針について発信してくれている人も出てきているので、お医者さん選びの参考にしましょう。
あと、悪化因子の特定は本気で重要。
これさえ分かれば、症状が激減する可能性が大きいです。
このサイトでも、わかりうる限りの悪化因子と対策法を紹介していくつもりなので、参考にしてもらえたらなと思います。
悪化因子をコントロール出来たら、ステロイドでコントロールしなくても症状消せると私は思っているし実際今そうしているから。
まとめ
・標準治療は3本柱(スキンケア・炎症を抑えるための薬物治療・悪化因子の除去)
・ステロイドやプロトピックさえ塗っていれば良いわけではない
・きちんと薬の使用法を指導できる医師を選ぶ
・スキンケアや悪化因子の特定など、医師が面倒みてくれないことは自分で勉強し補う
皮膚科もきめ細かく診療してくれる医師とそうではない医師がいます。不満はあっても、だからと言ってお医者さんを批判しても良くはなりません。お医者さんを選び、自分でもどういうときにアトピーが悪化したのかを特定して、改善に向かっていきましょう。