
アトピー性皮膚炎の炎症の度合いを測る数値であるTARCについてまとめておきます。私は全身症状がひどい時代にはまだメジャーではなかった検査ですが、2016年の皮膚科のアトピー治療ガイドラインにも出てくるようになりました。
もくじ
アトピーの血液検査TARCとは?
アトピーの診察に行った際、血液検査をして、TARCという数値が結果に出てきたのを見たことがありますか?もしくは、説明を受けたことがあるでしょうか。
TARCとは、タークもしくはタルクと呼びます。
お医者さんによって、やっていたり、やらなかったりだと思います。
TARCの検査値は、単純に言えば、「炎症の強さ」を測っています。
TARC検査の仕組み
TARCとは、ケモカインと呼ばれる蛋白質の一種です。(Th2ケモカイン)
体の白血球が細菌などから体を守っていることはご存知ですね。
仮に傷から細菌か何か身体に侵入すると、
その部分は赤く腫れ熱を持ち、痛みやかゆみを伴います。
この時、患部に白血球が集まってきています。
普段血管の中にいる白血球が、傷ついた組織へと集まってくることを
「白血球の遊走」と呼びます。
この「白血球の遊走」を起こすのが炎症物質の一種であるケモカインという物質です。
皮膚の炎症の場合は角質細胞や血管の上皮細胞からケモカインが分泌されます。
腸の炎症だと、腸の上皮細胞からケモカインが出ますし、その他の体の部位でもその組織特有のケモカインが分泌されます。それに向かって白血球が集まっていく仕組みになっています。
このケモカインの中で、アトピー性皮膚炎と関連性があるのがTARCというケモカインです。
大量に分泌されていれば血液でも測定が可能で、アトピーの炎症の指標として血液検査で測定をしています。
TARCの意味
TARCの数値は、アトピーの炎症の強さとほぼ同じ意味になります。
アトピーが重症になれば数値は上昇し、軽くなれば数値が減少します。
炎症を引き起こすリンパ球がどの程度働いているかがわかるので、例えば皮膚表面がきれいに見えても、数値が高ければ、実は目に見えないところで炎症が続いており、症状が再燃する可能性があるなど、レベルを数値によって把握できるようになったという点で、画期的といわれています。
皮膚がツルツルになっても、かゆいと思っていたらTARCは下がりきっていないとか、あり得ます。
TARCが下がりきらないうちに、皮膚の状態だけを見てステロイドの量を減らしたり止めたりすると、症状が悪化することになってしまう。
そういう状態に体がある、ということが医師と患者双方の目で確認ができる客観的な数値として、信頼できる指標と言われています。
2008年からは、保険適用になって利用しやすくなっています。
月に1回まで検査できます。金額は健康保険3割負担で1080円。(検査料金プラス判断料)あとは別途診察代とか。めちゃくちゃ高い金額でもないです。
検査として広がってきてはいますが、すべての皮膚科やってくれてるかなぁ?事前に電話でやってるかどうか聞いてみるのが確実です。
TARCで見るアトピー数値の基準値と異常値
大人の場合、TARCの基準値は以下の通りです。(子供の場合は数値がもっと高く出るので基準が異なります。)
450 pg/mL 以下 | 正常値 |
700 pg/mL 未満 | 軽症 |
700 pg/mL 以上 | 中等症以上 |
健常者の場合、TARC値は450未満ですが、成人型アトピー性皮膚炎人の場合は、TARC500以下を目標に治療を行うのが普通とされてます。
ちなみに、TARCが500以下というのが「症状が全くない寛解した状態」を想定しているとのこと。
では、標準治療ではこの数値をどう使うのか。
まずは、TARC値を正常値になるまで、必要十分な量のステロイドを塗り続けます。
そして、TARC値が正常化した後 ステロイドの減量を開始します。
減量の最初は1日1回塗って、TARC値を見ながら1日おきの使用、週数回の使用へと段階的に減らしていく計画となっています。
とはいっても、数値が上がればまたステロイドをしっかり塗るとか、調整しながらになります。
TARCがアトピーで10000超えだけど大丈夫?
TARCは悪化して紅皮症と呼ばれる状態になった時などは、10000を超えます。
紅皮症って、全身真っ赤になってる時ですね。
稀に、強力なステロイドを使っても数値が10000以上が続くときは、
リンパ系の悪性腫瘍が隠れているケースもあるそうですが、全身症状が強いアトピーの人って10000とか20000の数値は珍しくないようですね。
ちなみに、標準治療のホームページを作っている九州医大では
アトピー性皮膚炎の重症度をよく反映します。重症の人は3,000pg/mlを超える場合もあります。治療によって500~700pg/ml以下まで下がると、見た目でもアトピー性皮膚炎とはわからない程度に軽症になった証拠です。
(http://www.kyudai-derm.org/atopy/docter/05.htmlより引用)
と記載がありました。
見た目でもアトピーとわからないほどっていいますが、実際には個人差があると思います。
きらりの事例
私の場合を少しだけお伝えしておきます。
私がステロイドを止めて全身重症だったときには、TARCはまだ健康保険適用になったかならないかのころで、お医者さんから提案もされなければ、私もその存在を知りもしませんでした。
ある程度自力で炎症をとるための方法を試行錯誤する傍ら、アトピーの標準治療についてしっかり勉強し、その存在を知りました。
かなり良くなってから、栄養療法の先生のところで何回か測ってもらったことがあります。
2014年(35歳)の秋頃のTARCの数値は、261pg/mLでした。
そのころの腕の状態。
この時の症状は、腕の関節部分にそこそこひどい症状と、首、まぶたに少しアトピーの症状が残っていました。
全く持って標準値以下ですよね。それでも症状は残っていました。
このときは一切ステロイドを使っていません。
皮膚科学会の数値の標準の予想している推移とはちょっと違うのかな?と思います。
私はステロイドは使わない方法で改善を目指して、体の内部の炎症をとるアプローチをしていたから、体内の炎症から消えてゆき、皮膚表面の症状が残った結果なんじゃないかと考えています。
標準治療だと、皮膚表面からステロイドで治療していくので、
皮膚 ⇒ 内部 の方向で炎症が取れていくので、体表がきれいになっても数値が高いという現象が良くみられるのではないでしょうか。
この辺りは比較材料がないので、決定的なことは言えないのですが、実際そういう数値だったので、ご参考までに。
ここでステロイドで皮膚表面を一気に叩く方法もあったのですが、(実際そういう提案もお医者さんから受けましたが)私の好みの問題で、ステロイドは使用しませんでした。
標準治療をしていても、皮膚の深い部分から炎症を改善できる方法を並行して行うことで、再燃を防いで、早くステロイドを減らせるのではないかと思ってみたり・・・。これは私の勝手な推測ですけれどね。
おわりに・まとめ
・TARCは炎症の程度を客観的に見れる指標
・皮膚がきれいでもTARCが改善していない場合はステロイドは弱めない
・数値と皮膚の症状は必ずしもリンクしない。タイムラグあり。
体の内部で起きている炎症の度合いが客観的に見れる明確な指標ができたのは、治療する上でとても良いことだと思います。
どうしても治りかけは油断するし、治療が長引いて自分がどのくらい治っているかもわからないと、不安も募りますし。
ステロイドを使用するなら、この検査をちゃんと活用してくれる医師と治療にあたりたいものです。