
アトピー肌だと石鹸選びも一苦労。良い石鹸は乾燥やかゆみを引き起こさないものなんですが、成分はどんなものが良いのでしょうか。アトピーにお勧め!効く!という石鹸はどんなものなのか、実際使って調べてみた情報をシェアするので、ご自身で石鹸を選ぶ際の参考にしてみてください。
もくじ
アトピーに良い成分の石鹸とは?
石鹸を選ぶときに、どういう成分のものを選べば失敗がないのか、ポイントをまとめます。
まずは石鹸か合成洗剤かを見極める
実は、体を洗う石鹸は、「石鹸か合成洗剤か」という書き方での区別が製品に記載されません。台所洗剤だと明確に書かれているのですが・・・。
なので、自分で「石鹸」を表す成分名を確認するしかないんです。
・「石ケン素地」または「カリ石けん素地」と明記されている
・JISマークのついている石鹸は、純石鹸分93%以上と定められている
この二つで確認しましょう。
ちなみに「脂肪酸ナトリウム」「脂肪酸カリウム」と記載されている場合は、どのような種類の純石鹸分が使われているかの詳細ですので、石鹸だと思って大丈夫です。
脂肪酸ナトリウム(ソーダ石鹸)は固形石鹸か粉石鹸になります。
脂肪酸カリウム(カリ石鹸)は液体石鹸になります。
洗顔や体をあらう石鹸だと、せっけん素地とだけ記載されていることも多いです。
合成洗剤の場合は、どんなに弱酸性でお肌に優しいと書かれていても、アトピー肌に悪影響を及ぼすことがあります。
せっけんは、皮脂汚れと混じれば中性になり、水で流すと洗浄力を失うのですが、合成洗剤は皮脂となじんでも水で流しても肌の上で洗浄力を発揮し続けるので、洗浄成分が肌に残りやすく、洗い残しが出やすいのです。弱酸性で肌にやさしいと書かれていてもです。
結果肌に刺激が残り続けるデメリットがあります。
石鹸素地と記載があり、その他の成分が余り入っていないものを選ぶのがベストです。
配合成分が多いとアトピー肌はトラブルになりやすいです。しかもそのトラブルの原因が何の成分かを見極めるのが難しですよね、いろいろ入ってると。
季節によっても肌の状態変わることもあり得ますしね。
100%石鹸素地でできているものの他に、せっけん素地が97%以上で純石鹸と記載ができるルールになってます。
添加物が含まれているので、そちらも見ていきましょう。
添加物を見極める
アトピーの場合はできれば純石鹸で、添加物が少ないものが理想です。
ただ、添加物と言ってもいろいろありますので、知っておきたいところです。
グリセリン・糖蜜などの保湿成分
天然のハーブやエッセンシャルオイル
合成香料
着色料(天然色素)
着色料 (赤色○号といった人工着色料・タール色素)
金属イオン封鎖剤(キレート剤)・・・(エデト酸(EDTA)・エデト酸塩・エチドロン酸など)
※石鹸はミネラルの多い水だと洗浄力が悪くなるため、そのミネラルを封鎖し水を軟水化して泡立ちを良くする成分です。
酸化防止剤 (パラベン・フェノキシエタノールなど)
正直、肌の弱さやアレルギーの有無によって、どこまで許容できるか異なるし、人によっては季節によっても違ったりしますので、試して観察するのが一番良いのですが、まずシンプルに添加物が入っていないものを選ぶのが最初はよいと思います。
そうしたら、石鹸変えて何か反応が出た時に、何が悪かったのか比較すれば避けるべき添加物がわかりますからね。
パラペンで接触性皮膚炎起こす人もいれば、大丈夫な人もいる。(ちなみに私はOK)
エデト酸などの金属封鎖剤も刺激になってダメだって言う人もいる。(私はダメです。)
この辺は個人差ありです。
合成着色料は発がん性や皮膚炎の事例が実際に出ていますから、避けたほうがいいですね。
製法で選ぶ
石鹸の製法もいろいろあります。
1、中和法
油脂から取り出した脂肪酸とアルカリを直接反応させる方法です。
油脂は脂肪酸とグリセリンが結びついている化合物ですが、中和法ではまず油脂を脂肪酸とグリセリンに分けます。
そして脂肪酸に水酸化ナトリウムのアルカリ性を反応させて石鹸を作ります。
脂肪酸だけを取り出すので、脂肪酸の種類をブレンドして泡立ちや洗浄力を自由に調整できるのが特徴で、大量生産に向いている製造法です。
さらに、脂肪酸とグリセリンを分離する段階で不純物を減らすことができるのもメリットです。
反面、油脂にもともと入っていた保湿成分であるグリセリンを最初に省いてしまうので、保湿力を出したいといには、あとからグリセリンなどを添加する必要があります。変質もしやすいので、いろいろと添加物を後から入れる必要も出てきます。
2、鹸化法(けんかほう)
伝統的な石鹸製造法で、原料油脂とアルカリ剤を反応させて作ります。
窯に油脂とアルカリ剤(苛性ソーダ・水酸化ナトリウム)を入れて加熱・攪拌しながら作る方法を
・釜炊き鹸化法(ホットプロセスまたはバッチ法)
とも言います。
熱を加えてできた石鹸に、「塩析」という塩水で洗って不純物を取り除く処理をする方法としない方法があります。塩析する方法を【鹸化塩析法】と言って、不純物が少ない石鹸を作ることができます。塩析しない方法を【焚き込み法】といって、グリセリンや反応しきれなかった油脂や不純物が残った石鹸を作ることができます。
もうひとつ、
油脂に苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)を加えて撹拌し、加熱せずに反応時の熱だけで石鹸をつくる方法がありまして、
・冷静法(コールドプロセス)
と言います。天然のグリセリンや油脂分が残った石鹸をつくることができます。わざと石鹸に残る油脂分を多くして保湿力を高くしているものが結構あります。
3、エステル鹸化法
メチルアルコールをエステル交換反応させて脂肪酸メチルエステルを作り、アルカリでけん化して石鹸とメチルアルコールにする中和法と同じく、短時間で完全にけん化できます。
不純物や油脂の臭いを押さえられるのが特徴です。
中和法とエステル鹸化法で作られた石鹸は、わざわざ製法がパッケージに明記されていることはほとんどないです。
逆に昔ながらの鹸化法で作られたものは、「釜焚き」とか「コールドプロセス」と書かれていることが多いです。手間暇かけて作られていることをアピールしているんですね。
単純に考えれば、アトピー肌への添加物の刺激を考えると鹸化法で作られた石鹸を選択したくなるところですが、
天然成分にかぶれる人は、釜炊きで塩析をした純度の高い石鹸を使うか、中和法の石鹸のほうが落ち着くこともあります。
保湿力重視の人は、コールドプロセスの石鹸か、塩析しない方法【焚き込み法】で作られた石鹸を選べばいい、と言う風に判断ができてくると思います。
固形石鹸の成型法で選ぶ
1、機械練り
工程をすべて機械で行います。作業を効率化するために急速冷却・急速乾燥を行います。機械の強い力で練り合わせ、押し出し成型するので、石鹸の粒子が揃って見た目がきれいな石鹸になります。大量生産ができ、泡立ちがよくなります。
しかし、型崩れしやすい傾向があります。
2、枠練り
枠練り石鹸は型に流し入れてゆっくり冷却し、固めて作る石鹸です。
乾燥する工程で熱を加えないため、原料であるオイルにふくまれる天然保湿成分が破壊されないメリットがあります。
分子が大きな結晶になるので見た目キメがそろっていません。
手間がかかる手作り方法で、大量生産できないので、お値段は高くなります。
原料の油脂で選ぶ
石鹸の原料に何が使われているのかによって、石鹸の洗浄力や保湿力、刺激性などが変わってきます。
原料の油脂は脂肪酸の組成が異なります。脂肪酸がどのくらいの割合になるかで石鹸の特徴が変わってきます。
脂肪酸の皮膚への影響と、各脂肪酸が含まれる油脂の一覧はこんな感じ。
脂肪酸の種類 | メリット | デメリット | 多く含む油 | |
---|---|---|---|---|
ラウリン酸 | 洗浄力がある
酸化安定性がある |
肌を乾燥させる | ココナッツ油 (多)
パーム核油 (多) |
|
ミリスチン酸 | 酸化安定性がある | ココナッツ油
パーム核油 ラード牛脂 |
||
パルミチン酸 | 酸化安定性がある | 皮脂腺の増殖をさまたげる | パーム油 (多)
ココアバター みつろう 牛脂(多) 豚脂(多) 馬油 |
|
ステアリン酸 | 酸化安定性がとても高い | 洗浄力が低い | ココアバターシアバター牛脂 豚脂 | |
カプリル酸・カプリン酸 | 洗浄力がない
肌に刺激性がある 安定性が悪い |
ココナッツ油
パーム核油 |
||
パルミトレイン酸 | 皮膚組織の再生を助ける | マカデミアナッツ油
ヘーゼルナッツ油 ミンク油 馬油 |
||
オレイン酸 | 洗浄力がある
肌への刺激が少ない |
オリーブ油 (多)
つばき油 ひまわり油 牛脂 豚脂 馬油 |
||
リノール酸 | 皮脂腺の増殖を助ける | 酸化しやすい | グレープシード油
月見草油 大豆油 (多) 米ぬか油 |
|
リノレン酸 | 皮膚の炎症を抑える | 酸化しやすい | ククイナッツ油
くるみ油 月見草油 アマニ油 ローズヒップ油 馬油 |
|
リシノール酸 | 保湿力が高い | 非常に溶けやすい | ひまし油 |
手作り石鹸の本を見ながら、石鹸の主な特徴でアトピーに関係ありそうなところだけをまとめてみました。(多)と印がついているのは、油脂の中の脂肪酸の含まれている割合が多いものです。一つの油脂のなかに複数の脂肪酸が含まれてますからね。
ここからどの油脂をどのくらいブレンドするかが石鹸の個性を決めることになります。
表で見てもなかなか複雑なので、昔からよくあるパターンで多いものを挙げるとすれば、
牛脂やパーム油・ヤシ油のブレンドを主体とした石鹸です。
牛脂やパーム油の石鹸は低音の水では溶けにくいという欠点があるので、ある程度低温で溶けるヤシ油やパーム核油の石鹸を全体の2~3割混ぜて使いやすくした石鹸が、いわゆる昔ながらの石鹸として出ています。
代表的なのは、ミヨシの石鹸、シャボン玉石鹸
牛脂とパーム油の石鹸素地100%でできています。
牛乳石鹸の石鹸素地も牛脂とヤシ油です。
牛乳石鹸の場合はさらに乳脂とステアリン酸を添加しています。ついでに酸化チタンとEDTA-4Na、香料も入っていますので無添加とは言えない製品なんですよね。イメージは良いんですけどね。乳脂(クリーム)を肌に残してしっとりさせるのを目的にして作っているようです。
牛脂やパーム油はステアリン酸やパルミチン酸が多く、皮脂をがっつり洗い流すのが得意です。
反面、コレステロールを洗うのは苦手で、細胞間脂質というものの主成分。角質層のすき間を埋めてお肌の保湿因子が逃げてしまわないよう守る細胞間脂質がコレステロールなのですが、それはあまり洗い流さないのが特徴です。
普段からカサカサしている皮脂不足が深刻な人は、シャボン玉石鹸を使うとさらにガサガサの洗い上がりになるってことです。汗と一緒に皮脂が割と出る夏には使えても冬には使えない・・・って人もいるでしょうね。あと、ワセリン良く使う人とは問題なく使えてるかも。
ちなみに、ヤシ油やパーム核油単体だと、ラウリン酸・ミリスチン酸が多くなり、皮脂と細胞間脂質の両方を落としますので、さらに洗浄力が上がります。
では、皮脂を奪いにくい石鹸は何かというと、オレイン酸の多い石鹸です。
オリーブ脂や米ぬか油に多く含まれています。
皮脂の成分であるスクワレンを洗う力が余りないので、乾燥肌のアトピーさんには最適になります。
アレッポの石鹸はオリーブオイル90%、ローレルオイル約10%の石鹸素地です。
オリーブオイル100%で石鹸を作ると、溶け崩れしやすく泡立ちも悪くなるので、たいていは泡立ちを良くする他の油脂を混ぜて作られています。
パーム油やココナッツ油を加えて作ったものが、マルセイユ石鹸やカスティール石鹸と呼ばれて出回っているものです。
ただし、オレイン酸メインの石鹸は角質層内にある細胞間脂質であるコレステロールの洗浄には割と強い性質があります。
洗い上がりが穏やかだからと油断して何度も洗っていると、細胞間脂質を洗い流してしまい、お肌の保湿因子が逃げてしまいます。
これ知らないで、2度洗いとかしてしまうと、肌が赤くなったり、シワシワになる可能性ありますので、要注意なのです。(←きらり経験済み:涙)
石鹸の特性と洗い方を知っていればこういうことも防げますね。
アトピーに効く石鹸ってあるの?石鹸の本当の力
さて、いろいろ見てきましたが、結局アトピーに効く石鹸と言うのはあるのでしょうか?
石鹸に替えたらアトピーが治ったと言うのは、つまり洗浄力の高過ぎる合成洗剤から穏やかな洗い上がりの石鹸に変更することで、皮脂や細胞間脂質を奪うことが少なくなった結果であると言えます。
石鹸であっても、洗浄力、皮脂を奪う力があることには変わりありません。
特に、パーム油やヤシ油主体でできた大量生産の純石鹸は、保湿成分のグリセリンも少なく、なかなかの洗浄力です。
アトピーで皮脂を自前で出すことができない部分に使えば、余計に乾燥を勧めてしまう結果になりかねません。
アトピーに効くという表現を使う石鹸があったとしても、それは石鹸が積極的に肌の炎症や乾燥を治してくれるわけではありません。どんなに保湿成分があったとしても、何回も使うと当然汚れと共に皮脂や保湿成分を取り去ってしまうものに変わりはありません。穏やかだというレベルの話です。広告に踊らされないように注意したいところです。
アトピーを石鹸で改善するという発想ではなく、いかに肌を傷めずに使えるかに焦点を当てて選ぶという発想でいることが大切ですなんですよね。
アトピー向け石鹸でおすすめは?
アトピー向けであれば、添加物を入れず、人間の皮脂に近いオイルで作られ、できるだけ保湿成分が石鹸の中に入っているものを選択するのが良いと言えます。
昔ながらの鹸化法で、グリセリンなどの保湿成分を残し、油脂成分が肌に残る設計になっているものを選ぶといいですね。
コールドプロセスなど石鹸の原料の油脂のオイル分を残して作られている石鹸は、洗った後に皮膚の上にオイルの皮膜が残るようになり、しっとり感につながります。
そのため、皮脂の成分に近いオイルが残るほうが、肌なじみが良いと言われます。
皮膚成分に近くなじみが良いと言われているオイルは、
・オリーブオイル
・椿油
・馬油
等です。
なおかつ、あまり防腐剤、金属封鎖剤など刺激になりそうなが添加物が入っていないもの。
無香料で余分な天然成分も入っていないものを選ぶといいです。
そのうえで、かぶれないとわかっている成分が加わっているものを選ぶのはOK。
蜂蜜やグリセリンなどの保湿成分を追加している石鹸を選んで見るのもいいかもしれません。
忘れてはいけないのが、アトピー患部に薬や保湿剤を塗っている場合と塗っていない場合で、ちょうど良い石鹸が異なるということです。
ステロイド軟膏やワセリンを使用している場合は、肌の上に油の膜ができているので、洗浄力があるシャボン玉石鹸レベルの洗浄力でも全く問題なく使えることもあります。
何も肌に塗っていないのであれば、オリーブオイルや椿油などオレイン酸が豊富な原料でできた石鹸を良く泡立てて、軽く1回だけ洗うようにするのが良いと言えます。
普段つかっている保湿剤があれば、肌への保湿剤の残り具合でも、石鹸との相性が変わるので、その辺を気をつけてみるといいですね。
おわりに・まとめ
アトピー肌にあう石鹸選びはなかなか苦労します。
無添加で保湿成分が残っている石鹸の中で、軟膏の使用状況に合わせて石鹸の洗浄力で選んでいくといいですね。
皮脂が余りに少なくバリア機能が低下しすぎていると、石鹸を使わないという方法もあります。石鹸以外のアイテムやお湯だけのスキンケアについても見てみてください。
⇒ アトピーに石鹸は使わないは正解?悪化・肌に合わない時はどうする?